よさこいの練習の見学やお問い合わせをもらう中で、ほぼ必ず聞かれる言葉があります。
「ダンス経験がまったくないんですけど……大丈夫ですか?」
その一言の前後には少しだけ間があって、その表情からは「本当はやってみたいけど、正直こわい」という気持ちが伝わってきます。
僕自身、よさこいチーム「おどりびと」の代表として、これまでたくさんの未経験の人と話してきましたが、この質問が出てこなかったことのほうが珍しいくらいです。
よさこいは、外から見るとどうしても「踊れる人の世界」に見えます。
だからこそ、未経験だというだけで、最初から自分を線引きしてしまう人も少なくありません。
今回の記事ではよさこいを始めることへ無理に背中を押すつもりはありませんが、よさこい未経験で不安な方にとって、少しでも判断の材料や安心につながるものになれば幸いです。
結論から言うと、未経験でも大丈夫だと思っています
まず結論から言うと、「よさこいは未経験でも大丈夫」だと僕自身は思っています。
一応ここで言う「大丈夫」は、
「誰でも必ず続けられる」
「何も苦労しない」
という意味ではありません。
そうではなくて、「未経験だからという理由だけで、最初から諦める必要はない」という意味での「大丈夫」です。
実際、おどりびとに関わってきた中でも、
- ダンス経験がなかった人
- 運動が得意とは言えなかった人
- 振り付けについていけなかった人
そういった人たちが、未経験の状態からよさこいを始め、そして活動を続けています。
もちろん、簡単なことばかりではないかもしれませんが、それでも「未経験だったから無理だった」という理由で離れていった人は、正直ほとんどいませんでした。
多くの場合、続ける・続けないを分けたのは、経験の有無よりも、チームの雰囲気や、自分との相性、続けていく中での実感だったように思います。
だから僕は、未経験という一点だけを理由に、「自分には向いていない」と決めつけてしまうのは、まだ少し早いんじゃないかなと思っています。
未経験の人が一番不安に感じること
未経験の人と話していると、不安の中身は人それぞれのようでいて、実はかなり似ています。
その中でも、特によく聞くのはこのあたり。
振り付けについていけるか、という不安
「覚えるの、苦手なんですけど大丈夫ですか?」
「周りがどんどん進んでいったら、自分だけ置いていかれそうで……」
見学のとき、少し声を落として、こう話してくれる人もいます。
よさこいは、どうしても“踊れている人”が目に入ります。
一生懸命覚えた振りを、当たり前のように踊っている人たちを見ると、「自分には無理かもしれない」と感じてしまうのは、自然なことだと思います。
ただ、ここでひとつ伝えたいのは、今スムーズに踊っている人たちも、最初は同じところでつまずいていた、ということです。
振り付けが頭に入らない時期。
音に置いていかれる感覚。
何度やっても同じところで止まってしまう感じ。
そういう時間を経て、今があります。
でも、その「できなかった時間」は、外からは見えにくい。
だからこそ、未経験の人ほど、「自分だけができていない」と感じやすいのかもしれません。
体力や運動面についての不安
もうひとつ多いのが、体力についての不安です。
「最後まで踊れる自信がなくて」
「途中で息が上がったら迷惑になりますよね?」
こういう言葉も、よく耳にします。
このことについて正直に言うと、最初から余裕で踊れる人は、ほとんどいません。
息が上がることもありますし、次の日に筋肉痛が残ることもあります。
それでも、少しずつ身体が慣れていったり、自分なりのペースが見えてきたりする人が多い。
最初からできるかどうかよりも、少しずつ向き合えるかどうかのほうが、実は大事だったりするのかなと思います。
人間関係や雰囲気への不安
そして、意外と大きいのがこの不安です。
「輪に入れるかな」
「自分だけ浮いた存在にならないかな」
踊りや体力よりも、人との距離感に不安を感じている人も少なくありません。
よさこいは、チームで一緒に時間を過ごす場面が多い分、どうしても“人”が気になる世界です。
だからこそ、不安になるのは自然なことだと思いますし、この不安があるからダメ、ということでもないので安心してください。
未経験から始めて、今も踊っている人たちの話
実際に、こういった不安を抱えながらも未経験の状態からよさこいを始めて、今も踊り続けている人たちがいます。
ただ、その人たちが最初から前向きだったかというと、決してそんなことはありません。
「正直、楽しいかどうかはまだ分からないです」
「できるようになるイメージが湧かなくて」
そんな言葉を口にしながら、それでも一度来てみた、という人がほとんどでした。
もちろん最初のうちは、振りを間違えたり、周りについていけなかったりして、落ち込む場面もあったと思います。
それでも少しずつ通う中で、
- 顔と名前が一致してきたり
- 分からないところを聞けるようになったり
- 「今日はここまでできたな」と思える瞬間が出てきたり
いきなり大きく変わるわけではないけれど、確実に何かが積み重なっていく感覚が生まれていきました。
そうしてよさこいを続けられている人たちに共通しているのは、最初から向いていると確信していたことではなく、迷いながらも、しばらく時間を過ごしてみた、という点だったように思います。
向いていないかも、と感じる瞬間もある
ただ、正直な話をすると、未経験で始めた人の中には途中で「やっぱり違うかもしれない」と感じる瞬間もあるかもしれません。
思ったより体がついてこないとき。
周りと比べてしまったとき。
練習に行くのが少ししんどく感じたとき。
そういう時期が来ること自体は、珍しいことではありません。
でも、そのときに大事なのは、「向いていないからダメだった」と、すぐ結論を出してしまわないことだと思っています。
一度立ち止まって考えたり、
少し距離を置いてみたり、
誰かに気持ちを話してみたり。
そうやって整理していく中で、「やっぱり続けたい」と思う人もいれば、「今は違った」と判断する人もいるでしょう。
そのどちらも、間違いではありません。
それでも、最初の一歩としては「大丈夫」だと思う理由
ここまでよさこい未経験の人が感じる不安や続けられる理由など色々お話ししてきましたが、まだよさこいを始めることを迷っている人もいるかもしれません。
それでも、よさこいには「決め切らなくていい時間」がちゃんとあるからこそ、未経験から最初の一歩を踏み出して「大丈夫」だと僕自身は思っています。
例えば、よさこいの世界に触れていきなり本番に立つわけではないですし、最初から完璧を求められるわけでもありません。
見学をして、
体験をして、
雰囲気を感じてみる。
その中で、
「もう少しやってみたい」
「今回はここまででいいかな」
そうやって、自分で選びながら進める余地があります。
だから未経験だからといって、最初から答えを出す必要はないんじゃないかなと思います。
何より、同じく未経験の状態からスタートした人たちが寄り添ってくれる。支えてくれる。
それがよさこいの良いところだと思うし、僕自身もチームでとても大切にしていることです。
最後に、よさこいを始めるか迷っている人へ
もし今、「やってみたい気持ち」と「不安な気持ち」が同時にあるなら、その状態のままで大丈夫だと思います。
無理に決めなくてもいい。
誰かに合わせなくてもいい。
自分のペースで考えていい。
よさこいは、人生を劇的に変えてまで始めなきゃいけないものでも、何かを証明するためのものでもありません。
ただ、時間を重ねる中で、ふと大切な時間になっていくことがある。日々が彩られることがある。
その可能性が、少しだけあるのだと思います。
最初は気楽な気持ちで飛び込んでみるのもいいですし、もしあなたが飛び込んでくれたなら、同じ気持ちでよさこいに挑戦した人たちが支えてくれる。
「未経験でも大丈夫なんだ」という気持ちで、よさこいに向き合ってもらえたら嬉しいです。

